私をオリコン1位に連れてって



 あいにく天気は泣き出しそうな曇り空。覆い被さるような雲を、メンバーの面々、そして200万人の観客は見上げている。
「大丈夫よ」
 不安そうな面持ちのオリヴィエに、金の髪の女王陛下は元気良く励ます。
「天気ぐらい、女王の力でなんとかしてみえるわ。だから、最高のステージにしてね」
 オリヴィエは頷く。そして、盛大な歓声と共に、彼のギターが鳴り響いた。


 それはさかのぼること半年前。突然、守護聖特別会議が招集された。
 補佐官ロザリアは深刻な顔で説明する。
「この宇宙が危機から回復してしばらくが経ちました。宇宙は元の状態に復帰しつつありますが、そのための資金がそろそろ底を尽きつつあります。そこで、この財政難を乗り切るアイデアを考えて下さい」
 しかし当然ながら、商売事にはうとい守護聖。そうそう具体的かつ現実的なアイデアが出るはずもない。誰かさんの服を売ったらいいと思いまーす、誰かさんの本を廃品回収に出したらいいと思いまーす、のようなつまらないアイデアばかり飛び交い、やがて会議室は沈黙に閉ざされた。
 そんな中、オリヴィエの顔が突然ぱっと光った。
「ねえ、バンドをやるってのはどぉ?」
 皆、オリヴィエに注目。
「こんなに美形揃いなんだから、バンドを組んで売り出せば、けっこうイケるかもよ。それに、元気の出る曲なんか歌えば、この不景気をふっとばせるかもしれないし。あ、もちろんビジュアル系ね。メイクもバッチリで☆」
 守護聖としての職務はどうする、結局やりたいことはそれかよー、などの反論が出されたが、
「あ、それ決まり」
 という女王の一言によってあっさり可決された。

 メンバー構成は以下の通り。
 バンドのリーダーかつギターはオリヴィエ。ルックス重視のベースはオスカー。体力勝負のドラムはもちろんランディ。
 そして肝心のボーカルだが、「宇宙をこんなにした責任を取って!」と女王がむりやり美剣士アリオスを連れてきた。
 そして気になるバンド名も、女王権限で決まった。その名も…
『ホーリー・ガーディアンズ』
(↑まんまやんけ…)

 しかしこのバンド、売れに売れた。デビュー曲からしてオリコン1位を独走、新曲が出るまで常に1位をキープし続けるという快挙まで成し遂げた。
 普通に考えれば、売れるのは当然だ。王室が直接にプロフィールするのだから宣伝効果はもちろんのこと、作詞作曲に売れっ子のセイランを起用、マーケティングリサーチはエルンストとメルの強力タッグ、そして何よりメンバーのルックスが最高!
 さらに、このバンド独自の人気の秘訣として、曲ごとに様々なサポートメンバーを入れたことが挙げられる。デビュー曲こそ4人で演奏されていたが、2曲目には白髪ウサギ目の少年がキーボードとして参加、3曲目はうってかわってバラード路線で、美女と見まごうばかりのハープ奏者が仲間入り。他にも、サックスを吹く金髪少年や、謎のシタール奏者、もちろんセイランも気まぐれに参加する。
 ルックス、楽曲、メンバー構成、さらにはファッションやメイクまで様々な趣向を凝らし、ついには全宇宙のトップにまで上り詰めることに成功した。当然収入も大きく、しかも女王直属のプロジェクトのため税金もかからない。(てゆーか、全部税金?)


「それじゃ、最後に俺たちの新曲を聴いて下さい」
 アリオスがマイクに向かってささやく。ランディがカウントを入れる。オリヴィエのリフ。オスカーの重低音。
 半年間のバンド活動、6枚のシングル、2枚のアルバム、そのすべての集大成が、この超巨大野外コンサートだった。天気は女王の力で守られ、この素晴らしいステージは今まさに最高に盛り上がろうとしていた。
「きゃー、アリオス最高ーっ」
 女王陛下も喜んでいる。
「ちょっと、陛下。あんまりノリすぎると、力の集中が出来ませんよ」
 ロザリアの懸念はやや遅すぎた。空はいきなり真っ暗になり、皆が空を見上げると同時に、激しい雨が滝のように降り注いだ。
「あ、ごめんごめん。今天気にするからね」
 たちどころに雨はやみ、雲の切れ間から差し込む光が、神々しくステージを照らし出す。
 そしてそこには、激しい雨ですっかりメイクのはがれ落ちたオリヴィエが立っていた。  


一番むごいです。
自分でもどうしてこんな酷い事が考えられたのか不思議です。
オリヴィエ様…ごめんなさい。
でも、一番評判が良かったです。


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